衰退のシナリオ


 プロスポーツの世界では、選手は監督より収入が多い。

しかし、命令系統・上下関係・権力は収入と比例しない。

 

 サラリーマンの世界では、一般的に「収入と権力」は正比例している。

とんでもない長時間残業をした時だけ、一時的に収入が逆転することがある。

 

 収入は「昇格」しないと増えない。

「成果主義」と称して「賞与」を出しているが、上司の収入を超える事はない。

「プログラムの出来高制」なんてお目にかかったことがない。

当月、何本プログラムを作っても、僅かな残業代が入るだけである。

したがって、プロスポーツの世界で見られる「成果主義」ではない。

目標未達時に賞与を減額する言い訳に過ぎない。

目標数値も、「到達不可能な設定」をしているのは明らかである。

成果を表す数字は、「人件費・利益」を中心に行われ、「プログラム本数」で行われたことがない。

早く作ろうものなら、「システムが簡単」だと言われる。

 

 品質は二の次になる。(うわべチェックだけで、本当の中身を誰も見ていない)

そして、自分達では物を作らなくなる。外注生産である。これでは、「ノウハウ」が自分達に蓄積しない。

協力会社を引き入れるのは、「人が足りないから」ではなくて「作れないから」である。

システムが作れないのに「システムエンジニア」と称している。

 周囲には、報告書作成のExcelの達人が沢山いる。

それが、VBAやc#・c++等と絡んで結構なシステムになっている。

これを「今時のシステム」だと思い込んでいる。

Word・Excel等のOfficeを駆使できる(これしかできない)人々が「システムエンジニアづら」している。

 

 業務分析・システム設計・プログラミング・データ切替、そしてメンバーを使いこなして、はじめて「システムエンジニア」である。

一方、団塊の世代の人々にも問題がある。

一世代前の分析方法・バッチシステム的設計、言語と言えば「COBOL」しか知らない。

酒が入ると「大型コンピュータ・バッチシステム・COBOL」の優位性を叫ぶ。

COBOLは当初の予想を超えて、多くのシステムが残っている。

 

 今時の若手は「COBOL」を知らない。

システムと言えば、マイクロソフトを中心とした「パソコンシステム」だと、思っている。

 

 さらに、部下の仕事をやったことがない管理者・上司が社内に増えていく。

「作る苦しさ」「作る喜び」「作る大変さ」を体験したことのない人々のマネジメントには説得力がない。

若手のモチベーションが落ちるのは当然である。

 

 そして、大トラブルが発生し、その実態が明らかになる。

システムを知らない人々が、世間への「トラブル説明」の矢面に立たされる。

システムの本当の姿を知っている人達は、人前には現れない。

 

「どうしたらいいんだ?」と部下に問う上司。態度は「上から目線」。しかし、本人は「ど素人」であることを認めている。

分らないのなら、今直ぐに「そのポストから去れ!」

 

勢いのあった会社は、世間から見放され、左前になっていく。