逆マグマ大使


 ずいぶん昔の話になるが「マグマ大使」という人気テレビ番組があった。

主人公の少年の首にはいつも「笛」がぶら下っていた。

少年は悪人や怪獣に襲われた時、

「マグマ大使!助けて!」

と叫びつつ持っている「笛」を吹く。

すると、ロケットに変身して現場に急行した「マグマ大使」はすぐに元の体に戻り「悪人」「怪獣」と戦う。

やっつけると、何処かへ消えていく。

決して恩着せがましくなく…

「マグマ大使!ありがとう!」

これまで、いくつものシステムを作ってきたが「ノートラブル」で完了した事がない。

何度も「マグマ大使!助けて!」と心の中で叫んだ。

助けてくれるなら「月光仮面」でも「タケチャンマン」でもよいのだ。

システム開発開始時には「キックオフ」とか称して関係者がお互いに

「がんばろう」と誓い合い、

「助け合おうね…」(某氏)

「うん…」(筆者)

「何でも気軽に言ってくれ!」(某氏)

「力になるよ!」(某氏)

と言い合ったはずが…

 数ヶ月後、システム開発が佳境に入ると泥沼化して…

気付くと、周りには誰もいない。

後ろを見ても「某氏」はいない。

明日九時迄にデータを回復し、さらにトラブルの原因を突き止めなければ…

お先「真っ暗」。

このまま何処かへ消えようか…

 色々な事象を自分なりに「理論化」してきたがいまだに理論化出来ない「事象」がある。

それは「ここぞ!本人の出番(よくない出番)」という時に必ず「いない人」がいることである。

しかも、タイミングよく

「なんで今日に限って休みなんだ!」(筆者)

悪戦苦闘。

徹夜して何とかやっつけた時、

「おっはよう~!」

とさっそうと出勤してくる。

「何かあったの?」(肝心な時にいない人)

「自宅に電話したんだけれど…」(筆者)

「ワリイ、ワリイ(悪い)…」(肝心な時にいない人)

「今度はそういう事がないようにするよ!」(肝心な時にいない人)

そして、また本人の作ったプログラムに「バグ」(ミス)が…

何故か本人がいない時に限って「トラブル」が発生する。

逆に、いつもそこには「筆者」がいる。(被害妄想か?)

「なんで、なんでいつも俺がいる時にトラブルが発生するんだ!」(筆者/心の叫び)

「神様!そんなに悪い事したつもりはないのですが…」(筆者/心の叫び)

打ち上げパーティーの当日に「トラブる」のもこれまた「不思議」でならない。

「お祝い」は「本番稼動日」より前にすべし(筆者の格言)

 本番後に「お祝い」して「おいしい酒」を飲んだ記憶がない。

ほとんど、その席上は仕事の話になり「お客様の愚痴・愚痴・愚痴…」

「オイ!終わってからもう一軒いこう!」(筆者)

「三人だけでそ~っと出よう!」(仲間)

 こういう席上で「一番張り切っている人」が「肝心な時にいない人」なのだ。

「振舞」は「ソツ」がなく「システムを知らない上司・お客様」に「苦労話」をしている。

「いや~大変だったんですよ」

「私が色々と手を回してやっと漕ぎ着けたんです」(肝心な時にいない人)

「何を言うか!お前は何もしていないではないか!」(筆者/心の叫び)

何も知らない人からはとても「うい」奴に見える。

いまだに「納得」できない。

あ~あ、酒も飲んでいないのにすっかり愚痴ってしまった。

 

心の中で彼を「逆マグマ大使」と呼んでいた。