変わらない


 ある日、テレビを見ていたら、美味いラーメン屋を特集していた。

何十年も続いているお店。

狭い間口でけっしてきれいだとは言えない。

 そこの主人がインタビューを受けていた。

「常連のお客さんは『何十年も味が変わらない』と言っていますがその秘訣は何ですか?」(インタビュア)

七十歳近い主人は、タバコを一服吸ってから静かに語り出した。

「ダシは開店当時とはまったく違う」(主人)

「では、なぜお客様は『味が変わっていない』と言うのですか?」(インタビュア)

「もし、ダシを変えていなかったら『味が変わった』と言われて、とっくに店は潰れているよ」(主人)

「?」(インタビュア)

「お客の味覚は日々変化している。それをお客は気付いていない」(主人)

「その味覚の変化を探り、微妙に変えてきたんだ」(主人)

 上司が付き合いの長い部下に向ってよく言う言葉がある。

「お前は『若い』なあ~」(上司)

「冗談じゃない!何を言うか!ず~っと異動させないで…」(部下/心の叫び)

俺の歳はあんたに仕え出した時の『あんたの年齢』をとっくに超えているのですゾ!」(部下/心の叫び)

 顧客から「変わらないサービスだ」と言われる為には、システムの「機能アップ」が必須である。

それに支えられて、ビジネスは成り立っている。


「無メンテシステム」は存在しない。

百歩譲って、あるとすれば、

「何年も顧客の商売が成長しない」または

「顧客のシステム責任者が超?保守的」に違いない。

こんな事が存在するはずがない。

 問題は「有料化」できるか否かである。

となると、単純な「パッケージ」提供では「機能アップ」の有難味が薄い。

継続的なビジネスをやろうとするのであれば、付加価値がいる。

これこそが「コンサルティングビジネス」である。

 実は決して「新しいビジネス」でもなんでもないのだ。

昔、システムエンジニアと言われた人々はこれをやっていたし、ビジネスとして「成立」していた。

ところが、世の中いつからかおかしくなって、これをやらなくなったのだ。

お客様を無視した独善的やり方が横行しだしたのである。

表面的にはお客様を「連呼」している。

 システムの「規模」「金額」のみを追いつづけるビジネス戦略はいつしか顧客から見放される。

堅実なサービスこそが次のオーダーを受けるもっとも有効な戦術である。

根気よく「田んぼ」「畑」に種を蒔き、根気よく「水」をやろう。

すぐに実がなるわけがない。

「農耕型民族」である日本人のやり方に一番合っている。

刈り取りしかせず、種を蒔かなかった「報い」は必ずくる。

その時にはもう「経営責任者」はいなかったりして…

「オ~イ!戻って来~い!」(筆者/絶叫!)

 

「じっくり」とシステムを作れないものだろうか?

その「機能アップ」はとても地味で目立たない仕事である。

しかし、これが顧客に対して「ボデイブロー」として効いてくることを人々は知らない。気付いた時には「離れられない関係」になっている。

 見せ掛けの営業体力を使うよりはるかに有効である。

すぐに「カウンターパンチ」を狙って相手を倒そうとするのはこの道の「ドシロウト」である。

静止衛星は、地球と同じ速度で飛んでいるからこそ地球からは止って見える。

 

何もしない事は「退却」と同意語である。