生地屋さん


 筆者のカミさんは服やカーテンを自分で作る。

休日は「生地」の買物に付き合うことになる。

行先は「生地の専門店」

筆者にとっては別世界である。

こんなに生地の種類があるのかと驚かされる。

さらに、季節によって品揃えが変わる。

カミさんが生地を選んでいる時、筆者はいつも「店員とお客さん」のやりとりを見ている。

「何を作られるのですか?」(店員)

「子供の服を・・・」

「何歳位ですか?」(店員)

「5歳です」

「男の子ですか?」(店員)

「ハイ、ポケットをたくさん付けたいのですが・・・」

「ならば、もう1m要りますね」(店員)

「じゃ、お願いします」

「竹尺」で生地をはかり、ハサミを入れると一気に右手を押し出す。

あっという間に一直線に裁断されている。

「お見事!」

目的に応じて、素材・長さ・作り方迄アドバイスしている。

媚びることなく、淡々と話す。

お客はアドバイスを受入れて生地を買う。

店員のやっていることは、まさしく「コンサルティング」である。

「只者ではない!」

「4・5年の店員では絶対に対応できない」とシロウト目でも分かる。

この光景は「ホームセンター」「パソコンショップ」でも見る事ができる。

物だけを売っているのではない。

したがって、お客はリピーターになる。

お客は「シロウト」だが、店員の技量を見抜くのは「クロウト」である。

「マニュアル通り」の返答だと、お客は途中で話を止める。

「これ以上、訊いてもムダだナ・・・」

時々「よく分かったのだ」と勘違いする店員がいる。

「システム構築の為のアドバイス」はビジネスになる。

「システムコンサルタント」と言っているらしいが・・・

「ペーパーシステムコンサルタント」が目立つ。

(ペーパードライバーと同類)

一度もシステムを作った事がない。

「家を建てた事のない大工」「鋸を使ったことのない大工」

これはありえないし、世間も「大工」と呼ばないだろう。

しかし、何故か「にわかシステムコンサルタント」が大きな顔をしている。

「システムコンサルタント」は「評論家」であってはならない。

「英語版の分厚い本」「コンサルティング手法の虎の巻」を片手にお客様に応対している。

「本物」ではない。

「自分の考え」「自分の言葉」「自分の経験」でお客様に接していない。

「抽象論」で「テンコ盛り」にした報告書作成手法は、いつしかお客様から見放される。

幾多の修羅場を乗り越えてきた人こそ、お客様に「実践的・有益なアドバイス」が出来る。

 

「本物」になるのに「近道」はない。