穴掘り


 昔、囚人の作業に「穴掘り」があったらしい。

たった一人でしかも「スコップ一丁」で大きな穴を掘らせる。

ただひたすら掘らせる。

掘り終えると、看守が命令を出す。

山のようになった土を指さして「この穴に埋めろ!」

驚いた囚人は、渋々作業を再開する。

そして、作業が完了する。

すると、また看守が命令を出す。

「ここに穴を掘れ!!」

「はあ?...」(囚人)

この作業を何度も繰返す。

 何が「辛い」ってやる前から「無駄」であるにもかかわらずやらされるのは...

半端な「ストレス」ではない。

人は、作業が大変でも「やった価値」があったと認識した時、一度に疲れが吹っ飛ぶ。

「反対の時の疲れ」は何十倍にもなる。

 企業では定期的に人事異動が行われる。

新任上司は前任者の実績を公の前では褒めちぎるが、それも着任後3ヶ月まで。

 その後、片っ端から否定し始める。

「目新しいこと」「変革」をやらないと、自分の評価が落ちると考えている。

「どうして、こうなっているんだ?」(新任上司)

「何を考えているんだ!」

「そんな事をいわれても、前の上司がそうしろ!と...」(部下)

 賢い部下は決して新任上司に反論しない。(心の中は大反対)

新任上司は「批判」を直接、前任者に対して言わない。

仕事のやり方は、その上司によって変わる。

本質的な変更より枝葉末節な趣味趣向の世界の変更がほとんどである。

しかし、当人は「メジャーチェンジ」だと思い込んでいる。

トップが「右に行くんだ!」と号令を出し、多くの人々は忠実に従う。

しかし、その先頭にいた人々は3年後の号令にやる気をなくす。

 新体制のトップは「左へ行け!」

気付くと先頭を走っていたつもりが最後尾になっているではないか...

しまいには、前任者の責任を追及されたりして...

賢い社員は、表面的には「右」に行っている素振りはするものの実際はやっていない。

したがって、方針が変更されても大きな痛手を負わない。

前体制の指示通りやっていない為、新体制者からは批判されない。

そして、数年後また体制が変わる。

「前の前の体制のやり方」があたかも「新しい考え方」のように号令が出される。

長年居続ける社員は嘆く。

「またやるのかよ。前もやったよ!」これは「拷問」である。

命令を「する側」はいいけれど「される側」にもなって...

「穴を掘っている仕草」はだんだん「裸の王様」に登場する「仕立屋」に似てくる。

説教はたまに聴くからその気になる。続けて聴けば飽きる。

薬はたまに飲むから効く。毎日飲んでいると効かなくなる。

 

「改革」には「改善」と「改悪」と「空改革」があり、見分けがつかない。