最高位


 システム開発がピークを迎え、帰宅時間が「午前様」の毎日が続く。

その中で時々、仕事が「定時」で終わることがある。

こんな時「上司」は「部下」に声をかける。

「チョット軽く行かない?」(上司)

「ちょっとだけだから…」(上司)

「ちょっとだけですよ」(部下)

渋々OKを出したような態度にもかかわらず、書類は十秒もかからないうちに片付けている。

早く自宅に帰ろうものなら、カミさんが

「今日、具合でも悪いの?」

「夕飯作ってないわよ」

家族は旦那の帰宅が遅いのが当たり前になっている。

早く帰って来られても生活のリズムが崩れるようだ。

 行先はいつもの「居酒屋」である。

「ヘ~イ!いらっしゃい!何にしますか?」

「エ~と、何にするかな?」考えている素振りをするわりには、注文は

「いつものヤツ!」

「取敢えず生ビール四つ持って来て!」

「乾杯!お疲れ様!」

 まずは今日の出来事の報告会から始まる。

一巡して最近の進捗状況に対する反省会に突入する。

…まだ仕事が終わっていないようだ…

 お銚子の本数が増えるにつれ、同席していない人々の評論に入る。

「彼がもうチョット頑張ってくれたならなあ~」

発言の全ては、己の器量不足を棚に上げた他人に対する「無い物ねだり」

ここまでは、飲んでいる全員が会話に加わっている。

以後「部下」は「聞き役」になる。

「話し手」の目線は定まらなくなり、言葉も聞き取りにくくなる。

誘った本人はここからが本番なのだ。

「自己中心的な話」が続く。

「愚痴」…

「自慢話」…

実はこの後どんな話をするかで「話し手」の現在の「評価」「位置付け」が読み取れる。

人は「自慢話」をする時、人生の中で一番評価された時の「自分」を語り出す。

お相撲さんは引退後紹介される時「最高位」が前に付く。

「元前頭筆頭、八島海…」

現役のお相撲さんは「元…」とは紹介されない。

「俺の学校は有名校でしかも成績優秀だったのだぞ!」

「俺は十年前こんなことをやったんだ。すごい事をやったんだ!」

「今の若い奴は俺からみれば大した事ないよ!」

「俺はあの人(経済界で有名な人)を知っているよ!」

(相手が本人を知っているかどうかは定かではない)

と言い出す人のほとんどは、今評価されていない。

もう「過去の人」である。

実力も頭打ちだ。

 今まさに実力を発揮し「周囲から評価されている人の話」はちがう。

間違いなくその人は「現在」「未来」をエネルギッシュに語っている。

「夢」を語っていると言った方がいい。

常に「前向きな話」になる。

「出来ない理由」ではなく「出来る方法」を考えている。

このタイプの人は必ず「何か」をやる人だ。

お付き合いしていて「損」はないと思うのだが如何ですかな?

 

あなたは次の「飲み会」が待ちどうしくなっただろうか?