神様


 若い頃、某事務センターの「大型コンピュータの導入」と「OSの保守」を任されていた。

ある時「セキュリティ問題」が急に持ちあがった。

現在の話ではないので、表現に「古さ」があることをお許しください。

早速、関係者が召集された。

役員が筆者に対して質問をした。

「コンピュータデータの保全は?」(役員)

「重要なマスタは、日々東京・大阪間で隔地保管をしています」

「各ユーザーファイルについてはパスワードがセットされています」

「夜間最終、全てのディスクファイルのバックアップを取っています」

「コンピュータ室への入退室は『カード』と『パスワード』がないと入れません」

「入口にはガードマンが立っています」

「オペレータは入退室可能ですが、ファイルを見ることが出来ません」

「プログラマ・SEはファイルを更新できますが、コンピュータ室には入れません」

「関係者以外の入室については許可申請を提出しなければなりません」(筆者)

 各ユーザーファイルの「パスワード」は一括管理しており「パスワード」というファイルに保存していた。

その「パスワードファイル」の「パスワード」は"PASSWORD"にしていた。

したがって、絶対に忘れなかった。

「万全です!」(筆者)

 続いて、システム開発部門責任者が「ドキュメントの保管状況」を説明した。

「プログラマが悪い事をしようとしたら?」(役員)

「彼らはコンピュータ室に入室出来たとしても、コンピュータの『鍵』を持っていませんからコンピュータは立ち上がりません」(筆者)

「さらに、いろんな難しい操作がありますので実質的には不可能です」(筆者)

「作成されたプログラムをオペレーション部門に引き継ぐ『手続』と『システム』は誰が作ったのですか?」(役員)

「それは、私が作りました」(筆者)

 また、何万本もある「磁気テープの保管」についても電算部門責任者から説明があった。

「データは、正副のテープに保存されています」(電算部門責任者)

「本番データはプログラマが使用できません」(電算部門責任者)

「磁気テープを管理するシステムは誰が作ったのですか?」(役員)

「私の部署で開発しました」(筆者)

 それぞれの責任者は「問題ありません!」と万全であることを強調した。

「ところで、このコンピュターシステムに悪さができる知識を一番持っているのは誰ですか?」(役員)

「………」(全員沈黙)

「八島君が全ての業務に絡んでいるから何でもできます」(某氏)

「………」(筆者)

「八島君。あなたからシステムを守るにはどうするのですか?」

「それは可能ですか?」

「出来るとしたらその仕組みは誰が作るのですか?」(役員)

「は~私は~私は~…」(筆者)

 

「私は『神様』です!」(筆者)