自己満足度


 周囲からどんなに評価されても、自分自身が納得できない仕事はある。

 

「八島さん、これで十分ですよ。これで、OKです」(お客様)

「いや、もうちょっと考えましょう」(筆者)

言われた通りにやっていて何にも問題ないのだが・・・「顧客満足度」は高いが「自己満足度」は低い。

 

以前、社内で大型コンピュータの導入・システム保守を任されていた。

休日出勤して床下のケーブル配線を自らやっていた。当然、コンピュータの配電盤のチェック等もやっていた。

 

その後、社内異動でお客様相手のシステムエンジニアになった時、

お客様の代わりに配電盤・ケーブル配線のチェックを行い、お客様の業者とやりあった。、

「SEが設備関係の事が出来るとは思わなかった。大変助かりました」(お客様)

その後、ハード・ソフト・設備全般のサポートをすることになった。

 

筆者にして見れば、特別な事でもないので「評価」されたとは思っていなかった。

しかし、こんなに「守備範囲」が広いシステムエンジニアは珍しいということになった。

 

その後「全社の業務をシステム化したい」との要望が出てきた。

当時は、単一業務のシステム開発が主流だった。

業務知識が全くないため、「業務分析を徹底的にやるべきだ」と主張した。

 

「お客様の為」というより「自分の為」だった。

 

ところが、このレポートによって現状業務の問題点が浮き彫りになった為、お客様の経営トップから「高評価」を得た。

「分析視点に偏りがない」のが評価のポイントだった。

「自分の為」にやったことが、「お客様の為」になった。

そして「お前のやっていることは、シスエムエンジニアの仕事ではない」ということになった。(筆者は何者?)

 

「顧客満足度」と「自己満足度」ともに高かった仕事はこの時だけだった。

 

その後、システム開発は大規模になり数十人のプロジェクトチームで作成するのが常となった。

引合・営業から基本設計までを担当するようになり、詳細部分はブラックボックスになっていった。

 

「『自分の思い・考え方』が伝わっているのだろうか?」(筆者の思い)

「完成システム」を見届けられなくなった。

 

よく分からない会議に出席させられ、筆者のスケジュールは他人がどんどん埋めていく。

よく分からない書面に「印鑑」を押させられ、何かあった時の責任のみが求められる。

 

売上額・システム規模と反比例して「自己満足度」は下がっていった。

「自分が目指したのは、これではない!!」「このままいくと必ず後悔する!」(筆者の叫び)

 

その時から、プログラミングを再度勉強し始めた。

基本設計・詳細設計・プログラミング・マニュアル・オペレーション…全て自分一人で行う。

自分がユーザーであり、自分が開発者。

 

全てが「見えている」。ひさしぶりに、「満たされた気分」になった。

 

これは、「仕事外システム」である。

他人から見れば大したシステムではないが、自分にとっては納得いくシステムになった。

今も、「売れそうもないシステム」をコツコツと作り続けている。

 

「自己満足度」は高い。