沈黙は金
「沈黙は金」というと「雄弁は銀」と続く。
「多くを語るより、沈黙の方が勝る」というのが日本では一般的解釈である。
「控えめ」を美徳とする感覚が根底に流れている。
しかし、欧米人の自己主張を見ると「どうも変だ」と感じていた。
ある時、年配者の薀蓄を聞いていた時、この話が出た。
諺が出来たころの古代ギリシャでは金と銀の価値は逆だった。(銀本位制)
「銀」が「金」より価値があった。
ということは、「沈黙」より「雄弁」のほうが勝ることになる。
この諺は古代ギリシャの雄弁家デモステネスのことばに由来し、
「沈黙は金の価値しかないが、雄弁は銀の価値がある」
「沈黙は時として有効な説得力を持つが、弁論や論説の説得力の足下には及ばない」という意味であったらしい。
納得できる。
この諺が、イギリス経由で日本に伝わってきた時「金の価値が銀より上」になっていた。 当時、イギリス・日本は「金本位制」である。
これは、日本人には受け入れやすい。
漢字をよく見ると、 「金より良」が銀であり「金と同じ」が銅である。
古代中国でも「金」より「銀」のほうが価値があったのだと推測できる。
中国人の自己主張は過激だ。日本人は大人しい。
しかし、今時の世間の若者にとって「沈黙は金」は死語になりつつあるように感じるのは筆者だけだろうか?
現代は、まさに「ゴネは白金」(筆者の造語)である。
システムの仕様を確定する土壇場で「ごねられる」ことを何度も経験している。
「ひょっとしたら、あるかもしれない」(ゴネの達人)
この一言で、発生率が地震よりも低い処理のプログラムを何本作ったことか。
一度も実行したことのないプログラムが周りにはゴロゴロしている。
当人は自分の主張が通ると何事もなかったように涼しい顔をしている。
他人がこれによって、どれだけ「迷惑」を被るかはどうでもよいのだ。
こういう人は「ごねる」常習犯であり、いつも回りは引っ掻き回される。
そして、当人は決して調整役を引き受けない。
月日が経ち、自分がごねて確定したことを簡単にひっくり返す。
当人には発言した記憶がない。
「え~、そんな事、言ったっけ?」(ゴネの達人)
「そうです!そうしろと言ったのはあなたです!」(筆者)
否定的な意見であった当人は急に肯定的な意見に変わる。
なんとか過去の発言と辻褄を合わせようとする。
どんどん時間が経過する。
現時点での是非はどうでもいいのだ。
「ごね得」は他人には「ゴネ毒」(筆者の造語)である。
この手の人々は熟慮して発言していない。
将来を見越して発言していない。
目先の損得・メンツの問題を最優先している。
自分の存在感をアピールするのが最大の目的である。
周囲から無視されることを最も恐れる。
相手が小者だったら無視できるのだが、結構地位のある御仁(ポストで仕事をしている人)にこのタイプがいると、物事が前に進まない。
「まずい」(筆者)
だまっていれば、当初の筆者の思う通りになったものが、本当のことを言ってしまった為に、元に戻ってしまった。
軽く流せばよかったのに・・・
本来のシステム設計の時間より、このような人々のお相手をする無駄時間がどれだけ多いことか。
お客様ならまだしも、これが上司となると最悪である。
だまっていれば、一番いい結果になったのに、ついつい「本当の事を言ってしまう性分」は筆者の最大の病気である。
これで何度、痛い目にあったことか・・・
余計な一言が死を招く。
つくづく、自分がイヤなってくる。
「沈黙は金」は筆者の「自制の句?」である。
みなさん、本当のことを言っちゃ
いけないヨ! いけないヨ! いけないヨ!
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