シンプル


 昔、コンピュータと言えば「汎用コンピュータ」を指し、一般の人々にとっては別世界の代物であった。

システムエンジニアは「スゴイ人」だと思われていた。

現在、コンピュータと言えば、ほとんど「パソコン」を指し、その気になれば誰でもシステムを作れるようになった。

そうなると、システムエンジニアは「スゴイ人」ではなくなった。

ミスをすると、

「そんな事、簡単にできるでしょ」「私でも作れますよ」なんて言われてしまう。

簡単なシステムは素人が作成した物とあまり変わらない。

しかし、それはあくまで「見た目」である。

そんなに甘くはない。

素人作成のユーザーは自分自身であり、操作ミスは余り起こらない。

起きたとしてもその対処は自分ですぐに分かる。

コーディングは至って「シンプル」

 

システムの作り方で「プロ」が「アマ」と大きく違うのは「エラー処理」である。

 

アマは「そんな事ありえませんヨ」の一言で片付ける。

ほとんどのエラーは、

「エラーが発生しました」

「操作に誤りがあります」

「データが間違っています」

の類の簡単なメッセージで終わる。

どの箇所がおかしいかは検討が付くのだ。

 

けっして、自分を責めはしない。

 

これが、お金を頂くプロとなるとそうはいかない。

どんな人が使うか分からない。ユーザーには初級から上級者までいる。

どんな操作でも「異常終了」しないようにしなければならない。

メイン処理のコーディングが数行でも、そのエラー処理は何十倍にもなる。

これは「表面」には出てこない。

さらに違うのは「美しさ」である。

言い方に違和感があるかもしれないが「美しさ」は存在する。

コーディングの記述方法。

汚いコーディングには「バグ」が多い。

「美しさ」は「見易さ」「分かり易さ」に通じ、論理が明確になっている。

さらに「無駄」がない。似たようなルーチンが存在しない。

したがって、トレースするのが容易である。

カウンタのアップは「ここの処理でしかやらない」「こういう考え方をするはずだ」と推測ができる。

ところが「アマ」のコーディングはそうはいかない。

とんでもない箇所で信じられない処理を行っていて「何故そうするのですか?」の質問に、

「なんとなく・・・」と返答される。

 

「無駄がない」と「美しさ」は同意語に思えてくる。

 

これは、どの世界にも通じる。

ある時、ピアノの先生からこう言われた。

「音楽は音が鳴っている所よりその間(休符)が重要です」

「名プレイヤーは限りなく少ない音で演奏する」

「下手な演奏家は音数(装飾音符)が多い」

 

本当の「シンプル」を作れるのが「プロ」である。

画面レイアウトの「シンプルさ」

[クリック]の「少なさ」

マウスの動線の「少なさ」

色合い・フォント・等々

 

ユーザーにとって「どうってことない(違和感を持たせない)」と思わせるのが「スーパープロの技術」なのだ。

「普通に見せる技術」が存在する。

 

素人システムは、一見「すごいシステム」に見えるのが不思議であり、

これを「スゴイ」と言う人々もいわゆる「素人」なのだ。

 

使えば使う程、システムは「プロ」と「アマ」の差が出てくる。

 

あれ~、どこかの「ブランド品」のセリフと同じになってしまった。