発酵


 酵母と言えば酒造りを連想する。

お酒は「人」が造っているように思えるが実際は「麹」(こうじ)が「酒」(アルコール)を造っており、 人間は「麹」に対していい環境(一定の温度)を保つ役割を果たしているだけである。

ひとつ間違えば「酢」になる。

造り手である杜氏(とうじ)は「麹」が酒を造り終える迄、

 

じ~っと待つ

 

おいしい「お酒」になると、杜氏が誉められる。

けっして「麹」は主人公にはならない。

 これまで、何度もシステム構築のコスト見積を行ってきたが、いまだに納得したことがない。

何度見積っても「性善説」「ノートラブル」の条件で安く見積っている。

「実績対比」にしても「うやむや」

なぜなら、システムがひとつだけであれば収支が他にないことから明確になるが、現実は何システムも並行して行っている。

どのシステムにどれだけのコストが掛かったかを把握するのは困難である。

しかし、世間ではそんなことは認められない為、それらしい「数字」を計上している。

ましてや、個別に「赤字」になるといろいろと面倒な作業が増えるからなおさら数字は「捏造」されていく。

そもそも、いろいろな経緯で作成されている数字を真面目に見ようという気すら起きなくなる。

 個別プロジェクトの採算を見ると全て「黒字」にもかかわらず、合計収支は「大赤字」というごく当たり前な人によってはとてもミステリーな現実が存在している。

真実の数字を計上させない「環境」(雰囲気)が存在している。

数字は、いじればいじるほど真実を表さなくなる。

分析しても空しさだけが残る。

どんな素晴らしい「意思決定システム」を構築してもその「根幹」のデータに「嘘」があれば何の意味もなく逆に誤った判断をする。

ややもすると「システム構築論」は「データ加工方法」にばかり目が行き「データの信頼性」に対する論議がされていない。

出来る限り人の手を介さずにデータを集めることが「真実」を把握する大前提であり「加工」よりも重要である。

見積作業で必ずといっていいほど出てくる算出式がある。

 

1 作業量=総プログラム本数×ステップ数(/本)

2 お客様と本番の日を決定

3 開発開始日から本番の日までの月数を算出

4 開発延人数=作業量÷ステップ数(/人月)

5 見積金額=人件費(人月)×月数

 

ここで算出された開発延人数が100人月だったとする。

これを5ヶ月で開発するとすれば、100÷5で毎月20人のスタッフが必要になり10ヶ月であれば10人になる。

さらに、2年で開発すると4人になる。

数式上では同一であるが現実は「同一」ではない。

「短期間の多人数開発」は「いい物」ができない。

「ドタバタ作業」に明け暮れる。

「期間が長い」とそれだけお客様の中の「酵母」が自然に活動し、自分自身を加工しだしていく。(発酵)

この時「手」を出してはいけない。

 

じ~っと待つ

 

このやり方が後から見ると「安く」「いい物」になっていることに気付く。

「杜氏」はビジネスになる。

但し、酵母の特性をよく知っていないと「酢」になることに注意しなければならない。

 

システム構築に「熟成」の概念が必要である。