パソコン不信


 何でもすぐに「印刷」するAさんがいる。

その為「インク」はすぐになくなる。

口癖は「万が一」。

インターネットの表示内容は当たり前、受信メールも印刷する。

メールは時系列に綴っている。同時にフロッピーにも書込んでいる。

しかも送信者別にフロッピーを分けている。受信フォルダを分ければ容易なのだが。

「一括してバックアップを取ったら」のアドバイスにも聞く耳を持たない。

このままだとフロッピーが増え、保管が大変になるのは明らかなので、「USBメモリ」をプレゼントした。

「何百枚のフロッピーと同じですから」の説明を受けたにも関わらず、「USBメモリ」「フロッピー」双方に書込みだした。

結局「印刷」「フロッピー」「USBメモリ」の3本立てになってしまった。

しかしこの作業を結構楽しんでいるようにも見える。

 

 数ヶ月後、フロッピーの書込はなくなったが「印刷」「USBメモリ」は残っている。

このやりとりを当初から見ていたBさん、皮肉まじりに「何が心配なんですか?」と一言。

これに対してAさん「万が一の時困るから」

ここ迄来るとつける薬はない。

 

 数日後、Bさんから『緊急呼出』を受けた。

パソコンでCDが読めないとのこと。

見ると、読取装置がハードエラーを起こしていた。

Bさんの机にはDVD・CD・MO・FDがたくさん積まれている。

それで、「外付ハードディスク」をプレゼントした。

「データを切替えた方がいいですヨ」とアドバイスした。

 

数ヶ月後、様子を見に行くと以前と何も変わっていない。

「どうなりましたか?」の質問に

 

「まだ今の媒体の方が安心だから」「万が一の時困るから」

 

 2人の根底には『パソコン不信』がある。

逆に「紙」に対する絶対的な信頼感。

そもそもパソコンの使用目的には『ペーパーレス化』『省スペース化』があるはずなのに本音・現実はそうではなさそうだ。

 

 パソコン習得度が「割切り」を後押しするに違いない。